小倉秀夫弁護士が、またまた誘導尋問に関するエントリを書いていますが、いまだに誘導尋問の本質が理解できていないようです。
 というのは表面的な議論で、要するに自分の質問が誘導尋問だと言われることをどうしても否定したいようです。
 だからといって、誘導尋問の概念自体を歪めてもらっては困ります。

 誘導尋問がなぜ誘導尋問と呼ばれるのか?
 それは誘導尋問だからです。
 誘導尋問が暗示尋問とか二者択一尋問とか呼ばれずに誘導尋問と呼ばれるのは、それが誘導尋問、すなわち、質問に対する回答者の回答を質問者の意図する方向へ誘導することに本質があるからです。

 誘導尋問の定義をいくつか見てみます。

 誘導尋問とは,特定の答えを期待して自由記述方式の質問を回避して押し付けないし暗示を用いる質問。(米国学者ウイグモアの定義
言語、音声、態度、形式等特殊な発問方法により相手方をして発問者の意図する事実を故意に供述させるような尋問方法(広島高裁松江支部判決昭和25年5月10日)

 小倉弁護士が引用した渡辺直樹弁護士の論考が手元にないことから読めませんので、渡辺弁護士が誘導尋問をどのように定義しているのか分かりませんが(定義部分を引用すべきだと思いますが)

誘導尋問においては,実際には尋問者が情報を提供して,証人には「はい」「いいえ」とのみ答えさせることによって,問答全体としては形式的には証人が答えた情報として裁判官に提供させるものである。

 渡辺弁護士が、「答えた情報として」と述べられていることからしますと、渡辺弁護士も基本的には被質問者の答によって情報操作をしようとするのが誘導尋問と考えておられるものと思われます。

 つまり、以上の定義から明らかですが、誘導尋問の目的は、質問者の思惑通りの回答を得ることにあるのであり、回答を暗示するということはその典型的な方法ではありますが、別の方法もありますので、回答を暗示するということは、誘導尋問の本質的要素ではありません。
 そして、回答を誘導するための具体的な手段がYES・NOに代表される二者択一の質問形式であるわけです。(この点については誘導尋問は、回答範囲を限定する質問によって回答を誘導しようとするものである。を参照j)

 小倉弁護士は、この誘導尋問における目的と手段の関係が理解できていません。

 ここで、小倉弁護士が私に対してした

 野党の共同提案にかかる刑事訴訟法改正案には無条件で賛成されますか?

が典型的誘導尋問であることを説明します。

 私は、これまで何度も全面録画の必要性を指摘しています。
 私が全面録画について問題にしているのは録画された情報の情報管理についてです。
 全面録画が必要だが情報管理も重要だ、という意見です。
 このことは私のブログを詳細にチェックしている小倉弁護士も十分認識しているはずです。
 小倉弁護士は、そのような私に対して

 野党の共同提案にかかる刑事訴訟法改正案には無条件で賛成されますか?

と質問しました。

 この質問は、「取調べの可視化ないし取調べの全面録画に賛成ですか?」という質問ではなく、全面録画の1つの制度化案である「野党の共同提案にかかる刑事訴訟法改正案」についての賛否を問う質問になっています。
 ここで小倉弁護士は、理念としての取調べの可視化の問題とその具体化としての法案をすり替えています。
 そして、その質問に「無条件で」という条件をつけています。
 理念としての取調べの可視化に賛成するかどうかの問題とその具体化としての法案に賛成するかどうかの問題は別問題です。
 理念としての取調べの可視化は1つの理想ですが、それを制度化するとなると刑事司法の別の制度との矛盾の調整やバランスを取る必要が生じますから、理念としての賛否とその理念をどう制度化するかは区別して考えなければなりません。
 小倉弁護士はそれを同一視しています。
 この時点で質問自体にバイアスがかかっているのですが、それに「無条件で」という条件をつけているのです。

 そして、「 野党の共同提案にかかる刑事訴訟法改正案には賛成されますか?」という質問と「 野党の共同提案にかかる刑事訴訟法改正案には無条件で賛成されますか?」という質問は、「無条件で」という回答条件を付することによってその論理的意味は全く違ってきます。
 つまり、賛成するかしないかという二者択一質問になるのです。
 この点については、「無条件で賛成する」ということについてで説明済みです。

 そして、二者択一の質問は、回答を限定することによって回答者の回答を多様性を捨象した(制度論についての見解は通常多様性を持ちます。)を無視した白か黒かという極端回答に誘導する質問になります。この点については誘導尋問は、回答範囲を限定する質問によって回答を誘導しようとするものである。で説明しました。

 つまり、小倉弁護士は、取調べの全面録画に賛成している私に対して、「 野党の共同提案にかかる刑事訴訟法改正案には無条件で賛成されますか?」という質問をすることによって、「 野党の共同提案にかかる刑事訴訟法改正案には無条件では賛成できない。」という回答を誘導することによって、「反対」という言葉を引き出し、質問においてすり替えた「取調べの可視化」と「野党提出の改正案」を再度すり替え、私が取調べの可視化に反対している、かのように印象づけようとしたことは誰の目にも明らかなのです。

 小倉弁護士は、問題の質問をしたエントリのタイトルを「端的に,質問してみる。」としていますが、端的に質問するならば、「無条件に」などという回答条件をつけることはないはずです。
 これはすでに多くの人に見抜かれているところです。

 小倉弁護士は、

特定の答えを暗示するなどの特定の事情がない限り,誘導尋問にはあたらないと評価することになります。

と言っていますが、まずここで、誘導尋問の本質を「誘導」から「暗示」にすり替えています。
 すでに述べたように、誘導尋問の本質はその名の通り「誘導」にあるのであって「暗示」はその手段です。

 なぜ「暗示」がその手段になるかと言うと、訴訟における主尋問では、証人は質問者側の人間であることが多いことから、質問の中に回答を混ぜ込む二者択一質問によって、質問者が期待する回答を回答者(証人)に知らせることによって、質問者の意図する回答をさせることができることから、「暗示」が有効な手段になるわけです。
 つまり、事実関係に関する質問において(証人尋問は原則的にそういう質問)、迎合的な回答者に対して、特定の事実(またはその反対事実)を質問に混ぜ込むことによって、その事実を肯定する(または否定する)回答を暗示することが、有効な誘導尋問の手段になります。

 しかし、私と小倉弁護士のような敵対関係にある者同士の間で、意見に類する発言を誘導しようと思うと、「暗示」はそれほど有効な手段ではありません。
 そこで手段として考えられるのは、論理です。
 回答の範囲を論理的に限定する)質問、すなわち回答が二者択一になる論理構造の質問をし、しかもその二者択一の選択肢の一方を回答者が選択しにくい問題に設定することによって、回答を他方の選択肢に誘導することが誘導尋問の方法として考えられるわけです。
 小倉弁護士の質問は、まさにこのパターンに典型的に該当します。
 つける必要も必然性もない「無条件に」という回答条件を付していること。
 小倉弁護士自身は、私からの同じ反問に対して未だに答えていないこと。
 などから、小倉弁護士に、主観的にも私の回答を誘導する意図があったことに疑いの余地はありません。

 何度も言いますが、誘導尋問が批判されるのは、質問に回答を限定して、回答を質問者が限定した回答に誘導しようとするからです。
 これを証人尋問において行うときは、証人尋問が事実に関する証言を求めるものであるという特質から、証言を期待する(または期待しない)事実を質問の中に混ぜ込んで、その事実についてYES・NOの回答を求めるという暗示的質問の形式を取ります。
 意見を求める質問における誘導尋問は、質問者の期待する意見をと回答者が回答しないであろう回答を二者択一の論理構造でもって質問することによってその目的が達せられます。
 小倉弁護士の質問がその典型であることは、すでに述べました。

 これらはいずれも誘導尋問です。
 回答を質問者の意図に誘導しようという意味で本質的に同じだからです。
 小倉弁護士は、この本質を理解していないか、あるいはことさらに無視しています。
 小倉弁護士が自分の質問が誘導尋問であることを認めたならば、姑息な質問の仕方をする弁護士だな、という程度の批判にとどまったかも知れませんが、誘導尋問の本質に目をつぶって自分の質問が誘導尋問であることをむきになって否定したことにより、弁護士として当然理解しているはずの誘導尋問の本質が理解できていない、つまり弁護士としての基本的理解と能力が欠如しているという評価を招く結果になっています。
 どっちに転んでもみっともない話ですが、後者のほうがお仕事に影響があるだろうと思います。

 なお、小倉弁護士が引用した渡辺直樹弁護士の論考では

例えば,「あなたは彼を殴りましたか」という質問に対しては「イエス」「ノー」いずれの答えも暗示されていないため誘導尋問とならないが,「あなたは彼を殴りませんでしたよね」という質問は「殴りませんでした」という答えを暗示しているため誘導尋問となるのである。

と述べられていますが、刑事事件の証人尋問では、「あなたは彼を殴りましたか」という質問も誘導尋問となる場合があります。というか原則的に誘導尋問です。
 渡辺弁護士は、「民事訴訟における」と明示されていますので、民事訴訟ではそういう考えの弁護士が多いのかも知れませんが、刑事事件では事実関係の認定が一般的に民事事件よりシビアです。
 刑事の傷害事件で、「あなたは彼を殴りましたか」という質問を証人に主尋問として質問する場合としては、傷害事件の被告人が正当防衛を主張している場合に、被害者に対して、被害者が被告人から殴られる前の状況について質問する場合が考えられます。
 この場合の主尋問は検察官が被害者にすることになると思われますが、その質問に「あなたが
彼を殴った」という事実を混ぜ込んでいるという事実そのものから、その事実を否定する証言を期待して誘導していることが認められます。
 すなわち誘導尋問だということです。
 誘導尋問でない質問の仕方としては、傷害被害者が傷害を負わせられるまでの経緯を坦々と聞いていくことになります。
 「あなたは彼を殴りましたか」という質問と「あなたは彼を殴りませんでしたよね」という質問の違いは、後者のほうが露骨な誘導尋問であるという違いにすぎません。
 語尾が「か」で終わるか「よね」で終わるかによって誘導尋問であるか否かを決している刑事関係の法律家はほとんどいないと思います。
 ただし、「あなたは彼を殴りましたか」という質問は、あまり具体性のある質問ではありませんから、争点の内容如何によっては、目くじらを立てるほどのものではない場合が多いということは言えると思います。
 それは、誘導尋問であるとしても許容されるということであって、誘導尋問ではない、というわけではありません。
 誘導尋問としての弊害がほとんどない場合には、誘導尋問であるとしても許容される、というのと、誘導尋問ではない、というのは言葉の問題にすぎないと言うべき場合もあると思います。
 
 しかし、小倉弁護士の質問は、明らかに私に基本的な姿勢とは逆の文言を回答させようという意図の基づくものですから、明白な誘導尋問です。

 小倉弁護士は、いつまで恥の上塗りをするつもりなのでしょうか?

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コメント(8)

有り体に言うてしまうと、小倉クン(同い年なんで「親近感」こめてクン付けで呼んでみる)の手口は「討論会初心者レベル」なんですわ。

討論なんかでの最大の有効手は、相手の「論理を崩す」ことなんだけど、小倉クンはつい「言質が取りたい」って意識が先行しちゃったんだな。
言質を取るためのハメ手を仕掛けてみたんだけど、それがエラい不出来かつ「相手が主張してもいないことを、あたかも主張しているかのように歪曲・捏造するもの」だったもんで、あっという間に見破られて逆に自分が追い込まれちまった。そういう図でしょ、これは。初心者がやりがちな“自爆”だね。

大体、こんなハメ手で“言質”取ったつもりになっても「私、最初っから表明しているけど賛成論者だよ?反対論者だっていうキミの言い分、まったく事実と正反対なんだけど」と指摘させちまえ丸ごとパーになっちまうわけで。
司会進行役――例えば『裁判官』とかね――がいる局面だったら、この手の“自爆”は致命傷だよ。

弁論や討論の練習をそれなりにこなしてりゃ、こんな拙劣なミスはしないんだけどなあ。

 自分を客観視できない、というのは論理的であろうとする人間にとっては致命的な欠陥なんですけどね。

 自分を笑いのネタにできないのは、コメディアンとしても失格な致命的欠陥ですが、それは「自分を冷酷に客観視できないからだ。(チャーリ・チャップリン)」と思います。ですから笑ってもコーヒー吹いてもいけません。
 あっ……もちろん一般論ですよ。(^^ゞポリポリ

> 自分を客観視できない、というのは論理的であろうとする人間にとっては致命的な欠陥なんですけどね。

 IT(インフォーメーション・テクノロジー)世界では,当然のように致命的欠陥で,業界追放モノです。IいかげんTクニーク弁護士には通用しない理論かもしれません

議論をつくした結果、原案に賛成する、というのと
無条件に賛成する、というのが違うこと、民主主義には「議論」というプロセスが大事だということぐらい、ウチの小学生の甥っ子でもわかりました(^^:
次は「議論に必要なマナー」と「都合の悪い質問からの逃れ方」を教えてやろうかな・・。

ちなみに、私の知り合いの営業マンは、「Yes,No,」の答えをさせるような営業トーク・質問をして客を追い詰めて行け、と教えられたそうです。

通行人1(被医療者) 様

「Yes,No,」の答えをさせるような営業トーク・質問をして客を追い詰めて行け、と教えられたそうです。

一発営業の飛び込み訪問販売であれば、効率的な営業かもしれませんが、ルート営業(固定得意先回り)ですと始めは騙せるかもしれませんが、しっかりした論理に基づいた営業トークじゃないと、成績が尻つぼみです。(相手にバレます)
そこに、人間味溢れる誠実さがあれば、トーク下手でも凌げる場合があるんですけど(^^)

やはり、人間は正直(誠実であること)が一番、ですね。

 人間、やっぱり舌は1枚の方がいい、ですね。>誰とはなく

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