誘導尋問の議論にそろそろ決着をつけましょう。
 そもそもの発端は、「端的に,質問してみる。」において、小倉弁護士が私にした

 野党の共同提案にかかる刑事訴訟法改正案には無条件で賛成されますか?

という質問に対し、私がはてブコメントにおいて

質問者の意図がミエミエの姑息な誘導尋問ですね。

とコメントしたことです。

 これは、私が小倉弁護士の質問にトラップの匂いを嗅ぎ取ったからです。
 しかし、トラップの匂いを嗅ぎ取ったのは私だけではありません。
 この小倉弁護士のエントリに対する最初のはてブコメントとして、s62さんが

なぜ「無条件」に賛成する必要があるのか理解不能。「条件付き」で賛成なんていくらでもあること。藁人形論法の極まりを見た。(以下略)

とコメントされていて、きっちりと「無条件」という回答条件に反応されています。

 これに対し、小倉弁護士は、訴訟における誘導尋問に関する文献等を漁って必死に自分の質問が誘導尋問ではないと力説されています。
 小倉弁護士の質問が証人尋問における誘導尋問であるか否かという問題については、答えは明瞭です。
 答えは否です。
 なぜなら、小倉弁護士の質問は、証人尋問における証人に対する質問ではないからです。
 そんなことは最初から自明です。
 私は、小倉弁護士の質問が証人尋問における誘導尋問ではないけれど、相手の回答を自分の意図するところに誘導する目的をもった誘導尋問である、と指摘したのです。
 それに対して、証人尋問における誘導尋問ではないといくら主張したところで無益です。
 もっとも、小倉弁護士の質問に対して小倉弁護士が主張する誘導尋問の定義を当てはめると紛れも無く誘導尋問になってしまうところが笑えるところですが、このエントリではその辺りはスルーすることにします。

 私が言った誘導尋問というのは、要するにトラップとしての誘導尋問です。
 質問に対する回答を特定方向に誘導することによって、誘導された回答に対する批判を予定しているという意味での、トラップとしての誘導尋問です。
 もちろん、小倉弁護士もそのような自覚があったので、必死になって自分の質問の誘導尋問性を否定したかったわけです。今でもそのようですが。

 ほとんどの方は、これだけ指摘すればお分かりかと思いますが、なぜトラップなのかについて少し説明しておきます。

 再確認しますが、小倉弁護士の質問というのは

 野党の共同提案にかかる刑事訴訟法改正案には無条件で賛成されますか?

というものです。
 この法案というのは、取調べの可視化という制度の設計図です。
 制度論である以上は、理想的な制度というのは現実問題としてあり得ませんから、真剣に制度設計を考えれば、いかなる設計図に対しても「無条件に賛成」ということはあり得ません。
 しかし、小倉弁護士の質問のトラップ性はそれだけにとどまりません。
 もし、私が、法案に対して「無条件に賛成する。」と答えたらどうなるでしょうか?
 そんな回答をすれば、私は以後、民主党の改正案に対する一切の批判にとどまらずあらゆる質問、疑問の表明も封じられることになります。
 無条件に賛成するということはそういう意味だからです。

 となると、私の答えは、「無条件には賛成できない。」以外にないことになります。
 では、私がそう答えると、小倉弁護士はどう言ったでしょうか?
 「矢部教授は取り調べの可視化に反対している。」と言ったはずです。
 私は、そういう藁人形論法を避けたいという意味で、「無条件で賛成する」ということについてで、法案に対する疑問点ということを明示して意見を述べてみました。普通に読めば、基本的に可視化に賛成しつつ制度としてのブラッシュアップを考えた意見であることは明瞭だと思います。
 それにもかかわらず小倉弁護士が私の意見をどう読んだかと言いますと、「総論賛成,各論反対」という総論の押しつぶし方であり多重トラックバックや二重コメントはそろそろやめて下さい。であるわけです。

 つまり、小倉弁護士の質問は、私を可視化反対論者に見せかけるための質問であったことを小倉弁護士自身が明白に認めているのです。

 なお、小倉弁護士は、多重トラックバックや二重コメントはそろそろやめて下さい。において、弁護士出身の公明党所属の国会議員にメールを出したと言っていますが、どのような内容のメールを出し、それに対してどのような回答があったのか全く明らかにしていません。
 場外では、メールを出したこと自体について疑問が呈されていますが、一応出したということにして、小倉弁護士は、それらの国会議員からの回答として

その議員さんも、バランス云々ということ抜きに、取調べの全面録音録画を一日も早く実現すべきだと仰っていたので、ごく一部の元検事さんたち以外の弁護士は、ほぼこの案に賛成なのではないでしょうか?

と書いています。
 この書き方はものすごく不明瞭な書き方ですが、できるだけ厳密に読むと、
 メールを出した国会議員の回答は「取調べの全面録音録画を一日も早く実現すべきだと仰っていた」ということのようです。
 ところで、場外で法務業の末席さんが「参議院では公明党議員全員が反対票を投じたのは、法案採決の個人別投票結果HPで明かです」と指摘されているように、公明党の参議院議員が野党提出法案に「無条件に賛成」ではないことが明らかです。
 では、衆議院議員はどうかというと、現在法曹出身の議員は富田茂之、漆原良夫、大口善徳、北側一雄、冬柴鉄三、神崎武法の6人のようですが、参議院では反対票を投じていながら衆議院議員が民主党の法案に「無条件で賛成」するとは信じがたいところです。
 つまり、6人のうちの誰がまたは何人が「取調べの全面録音録画を一日も早く実現すべきだと仰っていた」と言ったのか定かでありませんが(なぜ小倉弁護士は定かにできないのでしょう?)いずれにしても「無条件に賛成」する公明党の議員はいないはずです。いるならば、小倉弁護士がその旨の回答を明らかにするべきでしょう。

 そのような公明党の議員の回答状況をもとにして小倉弁護士は、「ごく一部の元検事さんたち以外の弁護士は、ほぼこの案に賛成なのではないでしょうか?」と推測するわけですが、その根拠はまったく薄弱と言うべきですし、そのような薄弱な根拠に基づく推測として「ごく一部の元検事さんたち以外の弁護士は、ほぼこの案に賛成なのではないでしょうか?」としか言えないのですから、「無条件に賛成」する弁護士はいったい何人いると言いたいのでしょうか?

 そして、私にだけは「無条件に賛成するか?」という質問を突きつけて、それに対して法案に対する疑問点を述べただけで、小倉弁護士は私に対して可視化に反対している弁護士というレッテルを貼ろうとしているのです。
 そして、それを建設的な議論と言いたいようなのです。

 要するに、小倉弁護士というのはそういう人間だということです。
 このような考えの人間が何を言っても最早推して知るべしと言うべきでしょう。

 小倉弁護士が矢部教授の独自定義を知らないと「恥の上塗り」?でまた私を批判していますが、とりあえず、このエントリとこれまでの私と小倉弁護士のエントリを読み比べていただければ、結論は自ずと明らかだろうと思います。
 正直、全文を読むのがばかばかしいのですが、最後の

そういう制度が導入されていれば,がんがん冤罪を生み出すことができてさぞ捜査機関の士気は上がることでしょう。

という一文を読んだだけでバイアスかかりまくり(極めて控えめかつ不正確な表現、端的に言えば妄想)であることが明らかです。

 重複するところが多いエントリですが、まとめ的エントリとしてアップします。

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コメント(9)

 下手糞なトラップは間抜けな兵士(booby)しか引っかからない。こういうトラップは糞の役にも立たない◎◎◎の投擲。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%97

小倉氏はご自身のブログ、la_causetteの26/06/2009付けエントリ「多重トラックバックや二重コメントはそろそろやめて下さい。」で、次のように書いておられます。

実は、弁護士出身の公明党所属の国会議員さんにメールを差し上げたところ、その議員さんも、バランス云々ということ抜きに、取調べの全面録音録画を一日も早く実現すべきだと仰っていた
小倉氏が具体的に「どの議員」に「何時」、「どのような文面」でメールを差し上げたのかは承知していませんが、既に国会審議の真っ最中の法案(反対政党の民主党が提案した法案ですので、公明党としては反対せよとの党議拘束を掛けています)に対し、外部からの質問に対して「私は民主党案に『無条件で賛成』です」などと返信するとは考えられない。

もし「私は民主党案に『無条件で賛成』です」という文面の返事の存在が、外部(返信の相手先など)で公表されたりしたら、その公明党議員は党本部から公式に叱責を受けるはず。特に冬柴鉄三氏や神崎武法氏など、党役員の重鎮であり国会議員としてベテランの方が、このような軽はずみな言質を与えるとは到底思えない。

いずれにせよ、小倉氏の受け取った返事とやらは、メールなりFAXなり、あるいは手紙や文書という、形に残るものであるとは非常に考えにくい。あり得るとすれば、「取調での全面録画を義務付ける法制化に賛成ですか?」という質問に対し、「全面録画は実現されるべきと考える」返事を返すのがせいぜいでしょう。

ただし『民主党案に』とか『無条件で』という文言が入った返事を、現職の公明党の衆議院議員が、既にその民主党案が国会で審議されている最中に、電子メールなどの証拠が残る形式で外部に発信することは考えられない。これは政党の政治活動や国家議員とリアル社会で携わった経験を持つ者であれば、指摘されるまでもない常識的なことだと思う。

加えて民主党には「ニセメール事件」という、苦~~い過去がありますから、特に親しい間柄でもない人からのメールの質問に、言質を取られかねない答えをホイホイと返すとは、私には想像ができませんが・・・。

 一言m(_ _)m

 異議(^-^)/ 小倉弁護士の主張には「わなの抗弁(entrapment defense)」を申し立てます。

 二言m(_ _)m

(゚Д゚) 異議を却下する。下記州判例「オリーブの法理」を引用する。
    罠の抗弁は、子供でも見抜けるような見え見えの罠には適用がない。
    なぜなら、法社会学的意味で、そもそも罠として不成立だからである。
    法は無意味で不能な主張への判断を裁判所に強いらない。

1946年4月1日付けデマウエア州高裁決定(デマウエア州対プルート事件),同州高裁判例集……ワシントン大学ローレビュー・アーカイブス・学内記事コラム「オリーブの法理」

なおこの判例につき下記も必ず参照のことw
http://motoken.net/2009/06/28-105050.html#comment-9104

全く馬鹿馬鹿しい話になってきましたが、粘着エントリの中に、どうしても看過できないものがありました。
よって、小倉氏の該当エントリに下記の文章を投稿してきました。

『小倉秀夫氏の文章に根拠が欠如していることが多いのはいつものことなのですが、本エントリーに記載された

取調べの過程では,弁護人は見せられないような「厳しい取調べ」を行うことを肯定しつつ,(弁護人が帰ったらまた同じような「厳しい取調べ」を受けるため短時間弁護人が同席するだけでは必ずしも「厳しい取調べ」で生じた捜査官と被疑者との間の心理的な「支配ー被支配」という状況が解消されないという状態において,「調書の作成時においてだけ弁護人の立会いを認め、弁護人が連署した調書」については後に任意性を争うことを許さない──そういう制度が導入されていれば,がんがん冤罪を生み出すことができてさぞ捜査機関の士気は上がることでしょう。
は些か看過できない物があります。
上記文章を要約すると、「弁護人の完全立会のない司法取引は冤罪を生む」「冤罪を生み出すことができれば捜査機関の志気は上がる」ということのようですが、特に後者に関しては、全ての警察職員を愚弄したものであると言わざるを得ません。
いかに知財関連専門の民事弁護士の書いた文章とはいえ、上記のような文章を「弁護士が実名で書いた」ことは、事情を知らない方が目にすれば深刻な誤解を惹起しかねないと認められます。
以上の点を踏まえれば、こちらとしても組織的な対応を取らざるを得ないと思われます。
よって、小倉秀夫氏にあられては、下記の点について事実に基づく明確な根拠を示していただくよう要求します。
1「捜査機関が意図的に虚偽自白を獲得しようとしているかのごとき主張の根拠」
2「がんがん冤罪を生み出すことで捜査機関の志気が上がることになる根拠」
以上2点となります。
誠意ある回答を望みます。』
まあ回答があることは期待していませんが、一応上司に相談したところ「実名で弁護士が書いた文章なら問題があると思われる。本庁への報告の必要も検討した方がいいかも。」という回答を得ています。

 被疑者被告人の人権擁護に貢献してきた自由法曹団、日弁連、ミランダの会、救援連絡センター、etc.でも、発言の責任を自覚して、舌鋒鋭く捜査機関を批判批難しても、小倉さんのような根拠レスなことは発表したりしないですよ。これらの人権団体は、その主張を裏付ける証拠関係のチェックは厳密で噂や誹謗で放言したりするこことはないです。
 ビラ1枚でも、その主張の根拠となる証人や証言ないし理論的根拠の学説や国連機関の宣言や勧告に依拠しています。

いわずもがなですが法令上の根拠:

刑法 第三十四章 名誉に対する罪
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

さらに判例上の根拠:

最判昭和56年4月16日・刑集35巻3号84頁
>三 刑法二三〇条の二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かは、摘示された事実自体の内容・性質に照らして客観的に判断されるべきであり、これを摘示する際の表現方法や事実調査の程度などは、同条にいわゆる公益目的の有無の認定等に関して考慮されるべきことがらであつて、摘示された事実が「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かの判断を左右するものではない。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=26370&hanreiKbn=01
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/84B4C6345687A9DF49256A850030AA5C.pdf

最(大)判昭和44年6月25日・刑集23巻7号975頁
>刑法二三〇条ノ二第一項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=27465&hanreiKbn=01
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/ADC64003F68B253949256A850030ABE0.pdf

つまり……

 最低限、報道(投稿)された内容が真実であると証明できること、真実と誤信したことがやむを得ないと認められる相当の根拠(ソース情報源や証拠)があることが必要です。誹謗中傷罵倒嘲笑するなら。
 すなわち、小倉さんがサイテーション(引用先の証拠項目みたなもの)を他人にシツコク求めるのは、それなりに理由があるわけです。ご自身は全く守っていないようですが、それも理由は皆さんがご賢察されるとおりかと。
 ちなみに、この程度の刑法各論知識は、昔も今も、ときどき法学部の刑法各論の学年末試験に普通に出題されているようです。

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